無機骨格を分子レベルから精密に
組み上げて新機能を創出する

 私たちは、環境、エネルギー、医療など様々な分野への応用を目指し、主として無機酸化物を用いた新材料の創製に取り組んでいます。ビルディングブロックの分子設計や自己組織化プロセスなどを駆使して組成や構造を精密制御し、従来にはないユニークな機能を創出します。


ビルディングブロック法による
精密無機合成

周期ポリシロキサン

 ポリオルガノシロキサンは高い熱的・化学的安定性を有する無機高分子材料であり、広範な分野で利用されています。異なる有機置換基を有するモノマーの組み合わせや比率だけでなく、その配列制御はポリシロキサンの精密な物性制御の観点から重要です。これまでに当研究室では、対称性オリゴマーをビルディングブロックとした重縮合反応により、ABA, ABBA, BABABなどのさまざまなモノマー配列を有する周期ポリシロキサンの合成を達成しています。

 

3次元ナノ多孔体

 かご型シロキサンは、剛直な多面体構造を有し、その頂点には様々な官能基が修飾可能であることから、3次元骨格からなるナノ多孔体のビルディングブロックとして有用です。当研究室では、かご型シロキサンの分子設計により、ゼオライトなどの既存の多孔体材料とは異なる新しい構造や機能を有するナノ多孔体を合成し、分離・吸着・触媒材料への応用を目指しています。

T. Hayashi, M. Kikuchi, N. Murase, T. Matsuno, N. Sugimura, K. Kuroda, A. Shimojima, Chem. Eur. J., 30, e202304080 (2024).
T. Hikino, K. Fujino, N. Sato, H. Wada, K. Kuroda, A. Shimojima, Chem. Lett., 50, 1643 (2021).
N. Sato, K. Tochigi, Y. Kuroda, H. Wada, A. Shimojima, K. Kuroda, Dalton Trans., 48, 1969 (2019).
N. Sato, Y. Kuroda, H. Wada, A. Shimojima, K. Kuroda, Chem. Eur. J., 24, 17033 (2018).

層状シリカ構造体

 層状ケイ酸塩は、SiO4四面体が二次元状に連結したナノシートが積層した物質であり、層表面に規則的な反応点、層間に交換可能なカチオンを有しています。当研究室では、層状ケイ酸塩を二次元のビルディングブロックとして活用し、薄い板状形態のゼオライトを作製しています。また、層表面の反応点を利用し、有機官能基が規則的に配列したナノ空間を創出しています。

M. Yatomi, T. Hikino, S. Yamazoe, K. Kuroda, A. Shimojima, Dalton Trans., 52, 18158 (2023).
M. Yatomi, M. Koike, N. Rey, Y. Murakami, S. Saito, H. Wada, A. Shimojima, D. Portehault, S. Carenco, C. Sanchez, C. Carcel, M. Won Chi Man, K. Kuroda, Eur. J. Inorg. Chem., 1836 (2021).
M. Koike, R. Sakai, S. Enomoto, T. Mino, N. Sugimura, T. Gotoh, H. Wada, A. Shimojima, K. Kuroda, Dalton Trans., 49, 8067 (2020).
Y. Asakura, M. Sugihara, T. Hirohashi, A. Torimoto, T. Matsumoto, M. Koike, Y. Kuroda, H. Wada, A. Shimojima, K. Kuroda, Nanoscale, 11, 12924 (2019).


動的機能を有する
シロキサン材料の創製

自己修復性材料

 自己修復材料とは、外部から受けた損傷を温和な条件下で自発的に修復する長寿命・メンテナンスフリーな材料です。当研究室では、シロキサン(Si–O–Si)結合の開裂・再結合によりクラックなどの損傷を分子レベルで自己修復する様々なシロキサン系材料を作製しています。

M. Suzuki, T. Hayashi, T. Hikino, M. Kishi, T. Matsuno, H. Wada, K. Kuroda, A. Shimojima, Adv. Sci., 10, 2303655 (2023).
S. Kodama, Y. Miyamoto, S. Itoh, T. Miyata, H. Wada, K. Kuroda, A. Shimojima, ACS Appl. Polym. Mater.3, 4118 (2021).
S. Itoh, S. Kodama, M. Kobayashi, S. Hara, H. Wada, K. Kuroda, A. Shimojima, ACS Nano11, 10289 (2017).
 

光応答性材料

 光を照射することで可逆的に形が変化する材料は、光駆動アクチュエータなどへの応用が期待されています。当研究室では、光応答性有機化合物であるアゾベンゼンやジアリールエテンで修飾されたシラン/シロキサン化合物の自己組織化により、無機骨格由来の高い熱的安定性を有する新しい光応答性ナノ材料を設計しています。

T. Harigaya, R. Kajiya, H. Wada, K. Kuroda, A. Shimojima, J. Sol-Gel Sci. Technol., 104, 659–665 (2022).
R. Kajiya, H. Wada, K. Kuroda, A. Shimojima, Chem. Lett., 49, 327 (2020).
R. Kajiya, S. Sakakibara, H. Ikawa, K. Higashiguchi, K. Matsuda, H. Wada, K. Kuroda, A. Shimojima, Chem. Mater., 31, 9372 (2019).
S. Guo, K. Matsukawa, T. Miyata, T. Okubo, K. Kuroda, A. Shimojima, J. Am. Chem. Soc.137, 15434 (2015).


無機ナノ構造体のモルフォロジクス

シリカナノ粒子

 近年重要となっているDDS(ドラッグ・デリバリーシステム)等への応用に向けて、シロキサン系ナノ粒子のナノ構造を制御することに注力しています。薬物輸送担体として応用するためには、特定の時間や特定の箇所で薬剤放出や担体粒子の分解が生じることが重要です。これら挙動の制御するために、シリカナノ粒子の細孔構造や導入する有機成分の制御を行っています。

T. Watanabe, E. Yamamoto, H. Wada, A. Shimojima, K. Kuroda, Bull. Chem. Soc. Jpn., 94, 1602 (2021).
T. Watanabe, E. Yamamoto, S. Uchida, L. Cheng, H. Wada, A. Shimojima, K. Kuroda, Langmuir36, 13833 (2020).
E. Yamamoto, S. Uchida, A. Shimojima, H. Wada, K. Kuroda, Chem. Mater., 30, 540 (2018).
 

規則性多孔質酸化物

 球状シリカナノ粒子が規則配列したコロイド結晶を用い、新奇な細孔形態を有する多孔質酸化物を合成しています。非晶質のシリカナノ粒子を結晶化することで、結晶性の細孔壁を有するメソポーラスシリカを合成しました。またコロイド結晶を鋳型として用い、球状細孔が規則的に配列した多孔質金属酸化物を作製し、熱電変換材料といったエネルギー変換材料への応用を目指しています。さらに、同様の手法を有機シロキサン系材料にも展開することで、柔軟な骨格を持つ多孔質エラストマーの作製にも取り組んでいます。

Y. Saito, T. Matsuno, Q. Guo, T. Mori, M. Kashiwagi, A. Shimojima, H. Wada, K. Kuroda, ACS Appl. Mater. Interfaces, 13, 15373 (2021).
N. Muramoto, T. Matsuno, H. Wada, K. Kuroda, A. Shimojima, Chem. Lett., 50, 1038 (2021).
T. Matsuno, T. Nakaya, Y. Kuroda, H. Wada, A. Shimojima, K. Kuroda, Chem. Asian J., 16, 207 (2021).
N. Muramoto, T. Sugiyama, T. Matsuno, H. Wada, K. Kuroda, A. Shimojima, Nanoscale, 12, 21155 (2020).
T. Matsuno, Y. Kuroda, M. Kitahara, A. Shimojima, H. Wada, K. Kuroda, Angew. Chem. Int. Ed., 55, 6008 (2016).